各エピソード
どの話もそうですが、全て全く全部が原作通りではなく、少しアレンジされています。
“マンガ”という絵やコマ運びでストーリーを進めるものと、“ラジオドラマ”という声と効果音だけで進めるものとでの
相違でしょう。もちろん、内容的に大きく外れてはいないのでこれはこれで充分出来上がった作品だと思います。
ただ、私は原作=マンガも知っているので、無意識とは言え、マンガのそのコマや表情を常に
オーバーラップさせてしまっているのはいい事なのか悪い事なのか・・・
「第1話 星祭の夜」
オープニングの優しいメロディがこの作品に良く合います。ジョーが旅に出たことや、旅先の情景、
子供達の七夕祭りの様子、サイコトラベルでの体験などがセリフだけでも理解できるのは
さすがですね。平成009での大人なフランソワーズの雰囲気が、この作品にはとても
合っていると思いました。別れたくない、一緒に死のうと駄々をこねる子供のようなジョーに対して、
「お願いジョー、言う事を聞いて!」とか「わかってなんかいないわ!」とピシッと言い放てるのは
平成版フランソワーズならですね。カッコいいです。ジョーについても、終始悩み続けているこの作品の彼役には
平成版ジョーがベストマッチでしょうね。ジョーに『僕にとっての母でもある・・』と言われて猛烈に
反発するフランソワーズは原作に無い展開でした。そう、平成版フランソワーズは
とてもストレートに『おんな』なのです。雪野五月さんの演技は、それを上手く表現されていました。
母と恋人と故郷、そして命(寿命)と愛。スケールの広い永遠のテーマです。
原作で登場するブリテンさんや張々湖さんが出てこないのは残念です。
「ブラックゴースト銀河系第三惑星支部総会」第1部
銀河系第三惑星ってどこ?と言う疑問は置いといて。若本規夫氏スカールのご機嫌声から始まるショートストーリー。
とにかく若本スカールのテンションの高さ!!暴走と言っても過言ではないでしょう。原作は当然ながら、平ゼロTVからも
この三枚目役スカールは想像つきません。名も無かった新兵くんへの命名も、CDスカール氏です。
この際、原作と切り離して全くのオリジナルキャラクターと思って聞くのがいいのではないでしょうか?
・・・それとも、潜在的にスカール氏はこの性格を持っていたのかしら?全ては、若本氏の演技力によるものに
違いありません。
ところで、「ぼんぼらぼっちぼんぼんぼん♪」って何ですか?
「第2話 機械仕掛けの心臓」
飛田展男氏演じる渋いハインリヒ。原作は1979年と言うから、今から25年も前。
当時の設定が今でも通用するのか、また、ネグリジェのシーン・豪邸のシーン・
夜と朝とでの奈々の変貌シーン・キスするシーン・など、絵によって衝撃的な表現だった個所を
声と音でどのように表現されるのか、興味津々でした。
このCDでは、彼の大人な雰囲気が充分に表現されていたと思います。
原作の方がもっとコミカルだった位。
香嶋奈々役の伊藤静さんの演技は上手ですが、残念なのは
小学生と言う設定だった奈々が、このCDでは高校生になっていること。
今時のちょっとスレた高校生が、こんな言葉遣いはしないでしょうし、こんなに単純に更正しないでしょうし、
40万円と言う金額も中途半端な気さえしてしまいます。今でこそ、“小学生”と言う設定が
リアルに生きるのではなかったでしょうか?高校生と聞いただけで嘘っぽさが一気に吹き出てしまい、すごく残念です。
また、ハインリヒの「愛されても愛する資格の無い人間だっている」という決め台詞も、
少し陳腐に聞こえてしまいました。ハインリヒは、そう軽々と“愛”について語らないと思うのですよ。
むしろ、原作のままに「もっともっと辛くて寂しい思いをしても、強く生きている人がいる」の台詞の方が
彼らしく、また彼だからこそ生きる言葉だと思います。この2点だけが残念だなー。
「ブラックゴースト銀河系第三惑星支部総会」第2部
スカール・・もとい若本氏大崩壊の第2部です。すでに、別キャラです(-_-;)「ニャロメー!」とか言ってます。
新兵こと横山くんの方が理性的で堂々としてるようにさえ思えてきます。
同人ウケされるようなネタも入っていて、私的には一瞬辟易#
でも、それ以上にスカール@若本氏の一人舞台が素晴らしいです。
ジョーとフランソワーズのらぶらぶを想像してひとり演技している様は抱腹もの。
そしてこの第2部の一番の楽しみは、【セリフと効果音とBGM】のフル活用、でしょう。
これは多分、映像で見るより、CDだからこそ楽しめるシナリオだと思います。
ここまで聞くと、もう製作サイドが楽しんで作ったストーリーだと素直に笑えますね。
何度聞いても噴出してしまうほど、いい出来だと思います(^^)v
「第3話 愛の氷河」
18歳と言う設定の平ゼロジェット。森久保祥太郎氏がどんな演技で
この“大人”な物語を進めてくれるのか、不安と期待でいっぱいでした。
テレビ版の平ゼロでは、回を追うごとにジェットの性格が大人になってゆく様を
上手く演じられていたと思いましたが、正直言うと、ちょっとこのCDでの彼は
どっちつかずだった様に感じます。セリフも、原作とは少しずつ変わっているので、
つい“軽さ”の方が前に出ているように取れてしまうのか、あるいは
物語の進行をジェットの独り言形式で進めているので、そこに
ジェットの感情が入ってしまうからなのかはわかりませんが・・・。
私としては、ジェットがエヴァに惹かれてゆく感情の移行が、今ひとつ弱かったように
感じてしまいました。どうしても原作の、”表情の変化”が根底にあるからかなぁ。。
亡くなったエヴァを抱いて氷河の上を飛んでいる情景は、CDだけではわかりませんよね?
原作の、見開き2ページによるこのシーンはとても美しく、その美しさと
二人の表情が見えない絵によって、より悲しみを表しているだけに、
音だけでの表現に限界を感じてしまいました。勿体無いです。
エヴァ・クライン役の生天目仁美さんは儚げで上品なエヴァを見事に演じられていて、
安心して聞けました。
私超個人的な感想としては、60点位かなぁ。酷くは無いけど絶賛までは出来ない、、と言う感じでした。
「ボーナストラック:出演者キャストメッセージ」
これを聞くまで、私はてっきり“各声優さんがキャラクターになって生誕40年を迎える
009という作品へ贈るメッセージ”のことだと信じていました。森久保氏がジェットとして、
櫻井氏がジョーとして、雪野さんがフランソワーズとして、、、と言うように。
ところが、いざ聞いてみるとそうではなくて、これはあくまで森久保氏自身の言葉・
櫻井氏自身の言葉、と言うように“声優さんからのメッセージ”だったのですね(~_~;)
それぞれの声優さんのファンなら、これは至福のプレゼントになるのでしょう。
でも、私としては逆にちょっと興醒めしてしまいました・・・。(ごめんなさいm(__)m)
折角ここまで009の世界に浸りながら聞き進めてきたのに、ぽっと素の声優さんが出てくる。
それでも、キャラクターを意識して話してくれている飛田氏はまだ良いですが、
「009での思い出のエピソード?第1回のアフレコに遅刻したことしか
覚えていませんね」という森久保氏の言葉にはガックリ。。。その程度なの?
演じている方はキャラクターへの思いはないの?声優さんにとっては“仕事”の一つでしかないのね?
という現実を見せられたようでした。
そんな内容なら聞かない方が幸せだったかも。。。
特に森久保氏や雪野さん、櫻井氏のメッセージにはそれを強く感じてしまいました。
麦人氏や若本氏は、さすがにお話がお上手だなぁと思い、コメントも的を得ていて安心して聞けました。
飛田氏は、ご自身も仕事抜きで009と言う作品を古くから知っておられるようで、
唯一、何度聞いてもいいと思えるコメントでしたね。
ぱたぱた的には、この【ボーナストラック】は一番マイナス要素に引っかかってしまった内容でした。
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